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「あー、よろしく。唐沢 蓮治だよ。蓮でいい」
「あ、はい。よろしくお願いします。れ、蓮さん……?」
「一年てことはまだ先だけど、もしこの研究室に来たいなら何でも訊いてよ。大野教授も俺のことは一目置いてくれてるしさ」
恐る恐る従った俺に、彼は気軽な口調で続ける。
気難しい人間も珍しくない世界だが、彼はずっと年下の学生にもずいぶんとフレンドリーだった。
言葉や口調から自信満々なのは、むしろ標準装備だから何とも思わない。「俺なんて……」っておどおどしてるやつに、誰が感性も大事な仕事頼むんだよ。
「柘植、サンキューな! 蓮さん、バタバタしてすみません。俺、ちょっとこれ持ってかないと──」
「気にすんな、大丈夫。教授待ちで暇潰してるだけだからさ」
よく知らないOBと二人で残され、気まずくて立ち去ろうとした俺に蓮が声を掛けて来た。
「えっと、柘植くん? ……可愛い顔してるよな」
俺は顔のことだけ言われるのはあんまり好きじゃない。性格が釣り合わないってわかってるから。
それでも明確に『上』の立場の、人間性もわからない相手には無難な対応をするに限る。
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