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「そうですか?」
ニコッと笑ってやると、彼は一瞬虚を突かれたように黙り込んだ。
そしてまた、口を開く。
「俺さ、大口のクライアントとの顔合わせついでに、教授とちょこっと話があって来たんだ。すぐ終わるし、その後二人でなんか食べに行かないか?」
「いいですよ」
誘われて、俺も軽く応じた。
同じ業界の、特に力のある人間との繋がりは大事にした方がいい。入学して数か月の身でも、その程度は学んでいる。
第一印象も別に悪くはなかったけど、話してみたら蓮は結構気のいい人だとわかった。
年は十五歳違いだ。どう見ても二十代って感じだったから三十三だって聞いて正直驚いたな。
俺たちは連絡先を交換し、彼から連絡が来るたびに二人きりで会うようになって行った。
二十歳未満で酒も飲めない俺と行ける店なんて限られる。いや、向こうは仕事柄も華やかな人たちとの付き合いも多い。
だから良さそうな店なんかいくらでも知ってるし、実際通ってもいるとは思う。
だけど俺たちが行くのは決まって庶民的な店だった。
プライドなんて大げさなものじゃなく、蓮は学生の俺に財布を開けさせるようなことは絶対しない。
俺としては特別高級な店に行きたいなんて思わない、というか緊張して味わからなくなりそうだから、むしろその方が助かってた。
このご時世、どこで誰が見てるかわからない。
いや「見てる」のは今も昔も変わらなくても、誰でもスマホで撮影して即ネットに上げられる状況は明らかに違う。
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