13人が本棚に入れています
本棚に追加
/128ページ
私は驚いた拍子に後ろに倒れて尻もちをついていた。佐藤は笑いすぎて過呼吸気味になっていた。
「びっくりした?」明日香は満面の笑みを浮かべていた。
「……なにこれ」
「だからドッキリだって」
カエラが狂ったように笑いながら部屋に飛び込んできた。
「お前も知ってたのか?」私は床に座り込んだまま振り向き、カエラを睨みつけた。
「もちろん」カエラは笑いすぎて吐きそうになり、目に涙を溜めていた。
「やりすぎだって……」
「やるからには徹底的にやらないと」明日香はしゃがみ込んで私の顔を見つめた。
「コンビニの人たちも知ってたのか?」
「あの人達は知らないよ」明日香はタオルで顔に付いた血を拭き取っていた。
「鈴竹さんは足に怪我を負っていたけど……」
「あれは本当に偶然。大村さんが手を怪我したのも偶然なんだよ。私たちかなりビビってたもん。呪いの人形のせいじゃないかって。フリーマーケットで適当に買った人形なんだけど良い仕事してたでしょ」明日香の顔には血糊の拭き残しがあった。
「勝村さんは人形の頭を引きちぎってたぞ」
「え? そんなことしてたの? それは聞いてない」明日香は急に真顔になっていた。
「呪いなんか無いって」カエラが口を挟んだ。
「今、勝村さんと大村さんがこっちに向かってます。そろそろ着きます」佐藤はスマホで位置情報を見ながら言った。
「あなたは何者なんですか?」私は佐藤を指差した。
「僕は本当に編集者ですよ」佐藤は恥ずかしそうにしていた。
外からけたたましい音が聞こえると、室内にいる四人は各々にとって最適な防御の姿勢をとっていた。
「なに? 何の音?」カエラは両耳を抑えながら叫んだ。
「車が衝突したんじゃないのか?」私は廊下を走った。靴を履かずに玄関のドアを開けると、その場で立ち尽くしてしまうのだった。家の庭に突っ込んだ車が花壇に衝突し、運転手の体はフロントガラスを突き破り、花壇の柵に衝突。頭部が切断されていた。顔は見えないが髪型は勝村によく似ている。私の中で写真がフラッシュバックしていた。風呂場で切断されたあの遺体だ。
「なに?」背後からカエラの声が聞こえた。
「見たら駄目だ!」私は振り返ってカエラの目を塞いだ。
「そんなことしたら見えないって、パパの驚いている姿が」
私の肩を誰かがポンと叩いた。振り向くとそこには生首を持った勝村が立っていた。私は声も出ないほどに驚き、廊下で倒れていた。
「ドッキリ、大大成功〜」勝村が両手を上げて叫んだ。カエラは笑いすぎて、また吐き気に襲われている。明日香と佐藤が爆笑しながら廊下を走ってきた。
「リアクションが良すぎるって!」明日香は扁桃腺が見えそうなくらいに大口を開けて喜んでいた。
「もう、いい加減にしろよ……」私は力尽きて横になり、目を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!