18話目

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 私は驚いた拍子に後ろに倒れて尻もちをついていた。佐藤は笑いすぎて過呼吸気味になっていた。 「びっくりした?」明日香は満面の笑みを浮かべていた。 「……なにこれ」 「だからドッキリだって」  カエラが狂ったように笑いながら部屋に飛び込んできた。 「お前も知ってたのか?」私は床に座り込んだまま振り向き、カエラを睨みつけた。 「もちろん」カエラは笑いすぎて吐きそうになり、目に涙を溜めていた。 「やりすぎだって……」 「やるからには徹底的にやらないと」明日香はしゃがみ込んで私の顔を見つめた。 「コンビニの人たちも知ってたのか?」 「あの人達は知らないよ」明日香はタオルで顔に付いた血を拭き取っていた。 「鈴竹さんは足に怪我を負っていたけど……」 「あれは本当に偶然。大村さんが手を怪我したのも偶然なんだよ。私たちかなりビビってたもん。呪いの人形のせいじゃないかって。フリーマーケットで適当に買った人形なんだけど良い仕事してたでしょ」明日香の顔には血糊の拭き残しがあった。 「勝村さんは人形の頭を引きちぎってたぞ」 「え? そんなことしてたの? それは聞いてない」明日香は急に真顔になっていた。 「呪いなんか無いって」カエラが口を挟んだ。 「今、勝村さんと大村さんがこっちに向かってます。そろそろ着きます」佐藤はスマホで位置情報を見ながら言った。 「あなたは何者なんですか?」私は佐藤を指差した。 「僕は本当に編集者ですよ」佐藤は恥ずかしそうにしていた。  外からけたたましい音が聞こえると、室内にいる四人は各々にとって最適な防御の姿勢をとっていた。 「なに? 何の音?」カエラは両耳を抑えながら叫んだ。 「車が衝突したんじゃないのか?」私は廊下を走った。靴を履かずに玄関のドアを開けると、その場で立ち尽くしてしまうのだった。家の庭に突っ込んだ車が花壇に衝突し、運転手の体はフロントガラスを突き破り、花壇の柵に衝突。頭部が切断されていた。顔は見えないが髪型は勝村によく似ている。私の中で写真がフラッシュバックしていた。風呂場で切断されたあの遺体だ。 「なに?」背後からカエラの声が聞こえた。 「見たら駄目だ!」私は振り返ってカエラの目を塞いだ。 「そんなことしたら見えないって、パパの驚いている姿が」  私の肩を誰かがポンと叩いた。振り向くとそこには生首を持った勝村が立っていた。私は声も出ないほどに驚き、廊下で倒れていた。 「ドッキリ、大大成功〜」勝村が両手を上げて叫んだ。カエラは笑いすぎて、また吐き気に襲われている。明日香と佐藤が爆笑しながら廊下を走ってきた。 「リアクションが良すぎるって!」明日香は扁桃腺が見えそうなくらいに大口を開けて喜んでいた。 「もう、いい加減にしろよ……」私は力尽きて横になり、目を閉じた。
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