16話目

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 スマホから着信音が聞こえた。テーブルの下で確認すると賢也からのLINEである。 「突然すみません。16話の最後に大村さんの変死体のカットを入れてクリフハンガーにしてください。参考資料の画像を添付します」  大村の生首の画像だった。口を半開きにし、左目は半分閉じているが、見開いている右目は白目を剥いている。それは誰が見ても大村だった。スマホで顔認証してもきっと本人として識別されるだろう。シートの上に置かれた生首の周囲にはプラモデルでも作るかのように、バラバラにされた胴体と内臓が綺麗に並べられている。 「了解しました……それにしても完成度の高い人形ですね」私は返信した。 「すごいでしょ。手作りです。それではお願いしますね」賢也は会話を続ける気のないメッセージを返してきた。 「スマホ見てるの? 肉食べなよ。焦げちゃう」カエラはトングをカチカチ鳴らしていた。 「うん……」偽物だと分かっていても私の食欲は急速に低下していた。  あまりにもタイミングが良すぎる。なんで焼肉を食べようとする瞬間に、こんな画像が飛んでくるのだ。肉を食べたいと言ったのはカエラだ。やはりカエラは明日香に命令されて私をハメようとしているのかもしれない。その可能性が更に高くなった。
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