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自宅に戻ってから画像を拡大して再度確認した。薄くなった前髪やホクロの位置まで完全に再現されている。背景に目を移すと見覚えのある内装で、どこなのかはすぐに分かった。三浦邸の二階の部屋だ。傷だらけのフローリングや趣味の悪い壁紙、大げさな窓枠、どれをとっても三浦邸である。なぎさと会った部屋と同じかもしれない。
時計は21時を回っていた。佐藤に電話を掛けるとすぐに出た。
「先生、こんばんは。何かありました?」
「ちょっと訊きたいことがあったので電話したんだけど、今大丈夫?」
「内容次第ですけど」佐藤は弱気なトーンだ。
「大村さんとは連絡が取れた?」
「いいえ……誰から聞いたんですか?」
「娘からだけど。これもドッキリなんだよね?」
「ちょ、ちょっと待ってください。場所を変えます」佐藤は慌てた様子で社内を移動しているみたいだった。鼻息がマイクに当たる。
「もう大丈夫?」
「ロイ先生、勘弁してください。こういう電話はNGですよ。会話の内容を聞かれたらヤバいです。僕をクビにしたいんですか?」
「確認を取りたかったんだよ。なんだか怖くなってきたからさ」
「大丈夫ですって。大村は生きています。本当にくれぐれも僕からドッキリの事を聞いたということを人に話さないでくださいよ」佐藤は掠れた小声で話していた。
「それはもちろん守るよ」
「あと先生からの電話はしばらくの間、着信拒否にしてもいいですか?」
「……うん」
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