17話目

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 17話目の漫画には全く手を付けていない。金曜日にはもう間に合わないかもしれない。今となってはもうどうでもいいことで、私は一人で三浦邸を再訪することにした。指紋という指紋を拭き取ってしまえばいいのだ。  しかし常に開放されていた正面玄関の扉は、びくともしないのだった。 「佐藤はこれがドッキリであると二回も説明してくれた。全て明日香の筋書き通りなのだ」と、いくら自分に言い聞かせても、佐藤が退職しているという事実が私の希望を奈落に突き落とそうとしてくる。  考えてみると私は賢也の事を何も知らないのだ。電話だけの関係性である。電話が繋がらなくなった途端に完全な赤の他人になってしまう。  三浦邸の向かい側にある家で張り込みをして、賢也を捕まえようかと思ったが、きっとここには二度と戻ってこないだろう。  明日香だ。明日香の口から直接「ドッキリ」の言葉を聞くしかない。もう終わりにしよう。早速電話をしてみたが音信不通である。  しかしこっちにはカエラという味方がいる。事情を何も知らないカエラに全てがドッキリであることを説明して、間接的に明日香とコンタクトをとってもらう事なら出来るはず。  急いで自宅に向かった。私が家を出る時にカエラは外出中だったが、今はもう帰ってきているだろう。法定速度を無視して車を飛ばした。  自宅に到着するが部屋に電気は点いておらず薄暗かった。水を飲みながら熟考した。このままカエラが戻ってこなかったら、むしろ朗報ではないかと。賢也、佐藤、明日香、そしてカエラが同じ日に音信不通になるなんて、あまりにも都合が良すぎるのだ。いよいよドッキリのクライマックスが近づいているのかもしれない。 「ただいま〜」  私の期待を裏切るかのように、カエラが買い物袋をぶら下げて帰宅した。 「ショッピングしてたのか?」 「うん。ちょっとね。どしたの? いつも以上に顔色が悪いけど」
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