13人が本棚に入れています
本棚に追加
/128ページ
「佐藤から聞いたんですか?」
賢也が唐突に話のピントを合わせてきた。賢也と佐藤に接点はあっただろうか? 過去を振り返るがなかったはず。
「自分でそう思っただけです」
「本当は漫画の最後で明かそうと思っていたんですけど、先生が描いてくれなさそうなので、ここらで面白いことを教えてあげますよ」
「何ですか?」
「漫画に登場した江口善の正体は佐藤拳士朗です」
「……」
「善さんは恨みを晴らすために出版社に忍び込んだんですよ。もっと詳しく知りたいですか?」
「……」
「僕と善さんは兄弟みたいな関係でした。善さんの書いていた小説は僕との共著と言ってもいいくらいです。二人三脚でやってきたんです。でも僕たちには足かせがあったんです。親です。これは世界共通の悩ましい問題です。親という存在は人によっては最大の味方になりますけど、最大の敵として立ちふさがる場合もあるんです。僕たちにとっては完全に敵でした。二人で出した結論は交換殺人です。僕が善さんの両親を殺し、善さんは僕の母を殺ことにしたんです。先生が会った僕の母は役者です」
「役者……」
「僕たちは解放されたんです。ようやく自分たちの好きなように生きられると信じていました。完成した小説を出版社に持ち込むと、次なる壁が立ちはだかったんです。ロイ先生と大村さんです。お二人のやったことは親の存在よりも悪質です。僕と善さんは次の計画を立てたんです。善さんは佐藤という人間になって明日香先生に近づき、僕はロイ先生に接近しました」
「何がしたいんだ?」
「先生の大切なものを奪いたいだけです。僕たちがそうされたように」
最初のコメントを投稿しよう!