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耳をすませると賢也が外から電話を掛けていることが伝わってきた。女子生徒の話し声が聞こえる。私は賢也に何も告げずに電話を切ると、すぐにカエラに電話を掛けていた。
「なに?」カエラは5コール目でようやく出た。
「もっと早く電話に出ろ。今どこにいる?」
「なに怒ってんの? 学校に決まってんじゃん。もうすぐ帰るところ」
「パパが迎えに行くから学校の中にいてくれ」
「何かあったの?」
「後で説明する」
私は部屋着のまま財布とスマホと車の鍵を握りしめて部屋を出て、レクサスに飛び乗った。タイヤから摩擦音を出しながら地下駐車場を抜けるとカエラの学校に向かった。
「クソ野郎!」ハンドルをキツく握りしめながら叫んだ。「ドッキリですよ」という佐藤の言葉を真に受けていた自分が情けなかった。頭のイカれた二人の男が私と大村を狙い撃ちしてきたのに、そんなことに気付かないなんて。
ようやく学校の門が見えてくると目の前に車を停めた。門の内側でカエラは不安そうな面持ちで待っていた。
「なに? どうしたの?」カエラは助手席に乗ると驚いた顔で私を見ていた。
「賢也はヤバい奴だった」
「そんな事、前から分かってるでしょ」
「佐藤もグルなんだよ。ママが危ない」
カエラの表情は一変。スマホを取り出すと明日香に電話をするが、泣き出しそうな顔で「出ない」と呟いた。
「家に行こう」私はハンドルを回して急旋回すると、明日香の住んでいる家に向かった。
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