3話目

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 マンションの近くにある公園まで歩いて向かった。公衆便所があったはずである。参考にするために写真を撮るつもりだったが、公園内では幼い子供を連れた母親たちがいた。若い父親の姿もある。私はカエラが幼い頃にこうやって公園で一緒に遊んであげた記憶がまるでない。ずっと部屋に閉じこもって漫画を描いていた。  中年男性が昼間に便所を撮影しているというのは、通報されてもおかしくないシチュエーションだろう。本当に撮りたいのは女子便所だが、中に入ろうものなら問答無用で逮捕されるかもしれない。LINEをしているように見せかけて数枚だけ便所の外観を撮ると、すぐに公園を脱出した。  周囲を見渡すと古ぼけた工務店があり、敷地内に焼却炉を発見。「ラッキー」と呟きながら私有地に侵入し、焼却炉を撮影。どうせなら内部も撮らせてもらおう。近くに人がいないことを確認してから接近し、蓋を開けようとした瞬間に、赤ちゃんの泣き声が聞こえてきて、私は悲鳴をあげそうになるのだった。公園にいた赤ん坊の泣き声だろう。そう思っても心臓はけたたましく動いたままだ。気を取り直しゆっくりと蓋を開けて中を撮影した。もちろん遺体なんてない。あるわけがない。
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