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「ここからは5話に入ります。黒魔術を使ったものの、やっぱり自分も痛いだけあって、相手に致命傷を与えるのは難しいわけです。元カレは既に高校を中退して建設関係の仕事をしていたので、元カレが高い場所の足場を渡っている瞬間を狙います。なぎさは遠くから監視して、タイミングを見計らってぬいぐるみの足に太い釘を打ち込みます。今まで使ってきた針とは太さがまるで違うので、返ってくる痛みも相当で、なぎさは激痛に悶絶します。見ると自分の足首が逆方向に折れ曲がっているんです。涙を流しながら痛みに耐えていると、遠くから悲鳴が聞こえてきます。顔を上げると、元カレがバランスを崩してビルから落下しているんです。地面に衝突するシーンは派手にお願いします。1ページ使ってもいいです」
「了解しました」
「僕のお気に入りの飛び降り自殺の現場写真があるので、その画像を送っておきますね。それを漫画で再現してください」
「……いや、それはちょっと」私はホラーを好んで描いているが、本物のグロ画像に対する耐性は殆ど無い。
「あと人形はコンビニに持っていきますね。手渡ししたほうがいいので」
「人形の写真だけでいいですよ」
「いいえ、そういうわけにはいかないです。それでは」
電話が切れるとすぐにファイルが送られてきた。冗談じゃない。そんなもん見たくない。しかし現場写真を忠実に再現してほしいと依頼されたら、見ないわけにはいかない。
「マジで最悪だ……」
独り言を呟きながら画像を開くと、電流に近い鳥肌が全身を駆け巡った。それはもはや肉塊であり、飛び降りの現場という前知識がなければ、人間とは思わなかっただろう。ファイルには同じ現場を他の角度から撮影した画像が数枚入っていた。これを凝視しながらトレースしないといけない。そう思うと気が重くなるのだった。
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