1話目

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 さっそくペン入れを開始した。提出するのは金曜日の深夜。まだ5日間ある。かなり楽な仕事だ。アシスタントがいなくても楽勝でこなせる。なんなら2話目のプロットも聞いておいて描き進めておきたいくらいだが、一抹の不安があった。  本当に1ページに25万円も払ってくれるのだろうかという不安である。ウキウキしながら原稿をコンビニに持っていったものの、賢也が二度と現れない可能性があるのだ。  自宅の住所は伝えていないが電話番号は交換している。ふとした瞬間に「何かとんでもなく馬鹿なことをしているのではないだろうか?」という懸念が込み上げ、自己嫌悪に陥りそうになる。とりあえず1話だ。1話を渡して100万円を手に入れることができたらアイツを信じてやろう。  三浦なぎさの画像とにらめっこしながら正確に描写した。しばらく漫画を描いていなかったためぎこちなくなっていたが、徐々に感覚を取り戻すと最初に描いた絵が気に入らなくなっていたが描き直す気はない。適当に描いても素人の何十倍も上手いのだ。  失われた情熱は簡単には戻らない。一度離婚した相手と再婚するのが困難であるのと同じように。
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