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⑬僕は統合を進めたい
小規模ギルドが大手ギルドに怯える理由、もしくは依存せざるを得ない理由はただひとつ、数の暴力にあった。圧倒的な人数差、戦力差が存在するからこそ、虐げられたり、守ってもらわなければいけなかったりするのだ。
つまり、人数さえ確保してしまえば大手ギルドにも対抗できる。僕が考えた計画「トラノイ計画」はひどく単純なもので、もういっそのこと「小規模ギルド」たちをみんな合併させてしまえばいいじゃないか……というものだった。
ただ、この計画を実行するには、よほどのカリスマ性か、崇高な理念か、はたまた恐怖をも伴うほどの強制力が必要だった。
好きで「小規模ギルド」を形成しているプレイヤーたちは、当然ながら「小規模」であることになにかしらのメリットを感じて遊んでいる。それなのに「みんなで大規模ギルド」になろうだなんて説き伏せても、当たり前のように抵抗にあう。
リアルの友だちとだけプレイしたいひとたちもいるし、「へべれけ」みたいに家族のようなグループで、のんびりほのぼのとプレイしていたいひともいる。IKEDAさんやベティさんも、そういうタイプのプレイヤーさんだった。
僕には、そんなみんなを説き伏せることができるほどのカリスマ性も理念もなかった。だけど、僕にはひとつ秘策があった。小規模ギルドたちを説き伏せて、ひとつの大きなギルドに統合できうる禁断の秘策が──。
「トラノイ計画」の語源は「虎の威を借る狐」ということわざから来ていた。ここで言う狐というのは、もちろん僕のこと。嘘つき女狐のAYAKAである。そして「虎」とは、なにを隠そう戦闘狂集団「Vengal」のことであった。
話は「トラノイ計画」を発案するすこし前までさかのぼる。僕はある日、ひょんなきっかけでとある重要人物と出会い、それ以来、少しずつ親交を深めていくことになる。
次項からはその重要人物との出会い、そしてそれをきっかけとして始動してしまった「トラノイ計画」の全貌を語っていきたい。
──その男は、羅刹のJaggerと呼ばれていた。彼は、血に飢えた猛虎たち「Vengal」の首領、ギルドマスターだった。
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