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①僕は言い訳がしたい
さあ、ではさっそく語っていこう。あの罪深き日々の記憶を呼び覚ましながら──。まずはじめに語っておくべきは、僕自身はいまも昔も、まぎれもなく勇猛果敢にして豪放磊落な快男児であるということだ。
断じて、「なよ竹のかぐや姫」よろしく、この世の男どもを魅了したいなどという願望があった訳でもないし、「生まれ変わったら女の子になりたい」などという絵空事にうつつをぬかしていた訳でもない。
たしかに中学生のとき、一度だけ学園祭のイベントで女装コンテストなるものに参加したことがある。僕が通っていた学校は中高一貫の男子校なのだが、その男子校における学園祭の一大イベントがまさにその、女装コンテストだった。いま思い返せば、闇そのものである。男子校の一大イベントが女装コンテストとは、これ如何に──。これについては、これ以上語るのは危険な気がする。なぜなら僕は勇猛果敢にして……(以下略)。
さて、話を女装コンテストから元に戻そう。なに、女装コンテストも気になる? だからそれをこれ以上語るのは……(以下略)。はい、何度もすみません。しつこいですね。しかし、物事には順序というものがあるのです。いまはまず、「ユグドラシル」というゲームのなかの出来事についての話をしたい。要するになぜ、このように男のなかの男である筆者がその仮想世界において女の子を演じ続けざるを得なくなってしまったのかということである。
いや、その前に「仮想世界」とはなにか。オンラインゲームとは、MMORPGとはなにかから語りはじめなければならないかもしれない。
僕にはできるかぎり誰にでもわかりやすいように、その世界を説明する義務があるし、責任がある。その責務が果たせなければ、僕はただ何か月間も友人や仲間たちに嘘をつき続けた大罪人として刑を処されるべきだろう。わかりづらい説明をしてしまったが、要は言い訳がしたいのである。僕が女の子になった理由。そして僕が女の子を辞めた理由。その言い訳がしたいのである(大切なことなので二度言った)。
次項ではまず、オンラインゲーム、そのなかのMMORPGというゲームジャンルについて簡単に説明したいと思う。そしてそのなかで最も罪深き行為、通称「ネカマ」について触れつつ、物語をすすめていきたいと考えている。いや、物語じゃない。これから語ることはすべて本当にあったことである。バーチャル世界において巻き起こったリアルなのである(うまいこと言ってちょっと満足している)。
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