22人が本棚に入れています
本棚に追加
②僕はMMORPGについて語りたい
さて、ではまずオンラインゲームとはなにかからはじめよう。……とは言うものの、さすがにいまの時代となっては、もはや説明不要かもしれない。
僕が高校生くらいのときには、まだそれは世間的には新しく珍しい部類のゲームだったと思う。二十一世紀を迎えてすぐのころ、携帯電話やPHSが当たり前になり、家庭にはPCが一台。有線LANの普及により、ピーヒョロロロ……という音からはじまる電話回線の時代が終わりを迎えたくらいの時代。ああ、あのころはなにもかもが輝いて見えた。夢に恋に、心を躍らせ、なんだってやればできるという希望に胸を震わせていた。それがいまとなっては……おっと、話が逸れた。ご、ごほん。たいへん失礼しました。
オンラインゲームとは、その名の通り、インターネットに接続してオンライン上で遊ぶゲームである。いまの時代となっては、当たり前というか、もはやそれが前提となっている気がする。街中にインクをぶちまけてご近所さんの迷惑も考えず陣取り合戦をする某ゲームもそうだし、世界中を旅してモンスターを集め、交換をして、ときにはバトルをする例のシリーズもそうだ。世の中はインターネットなしにゲームができない時代になろうとしている。そろそろ、このオンラインゲームなどという言葉すら消え失せてしまうかもしれない。
僕が今回、このエッセイの舞台として取り上げ、事前に皆さまにご説明をしておきたいのは、オンラインゲームのなかでも「MMORPG」というジャンルのゲームだ。マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲームの略称らしい。もちろん、なんのことを言っているのかは僕には皆目見当がつかない。僕は日本人だから、こんな難しい外国語は理解できないし、理解する予定も当分ない。とにかくMMORPGなのである。
MMORPGとは、要するに「仮想空間のなかでたくさんのプレイヤーとともに同時に遊ぶRPG」のこと。パーティを組んで冒険をしたり、会話を楽しんだり、ときにはギルドという組織を結成して戦争をしたり、なにをするにも自由なことが一番の特徴ともいえるゲームのことである。
僕は高校生のときに人生で初めてこのMMORPGを体験した。今回の舞台となる「ユグドラシル・マスターズ」の前身である人気ゲーム「ユグドラシル・オンライン」である。当時の僕は、お金のない高校生だったのでβテスト版までのプレイ(正式リリース時には月額制になってしまった)だったけれど、その解放的な世界観と自由に選べるプレイスタイルに激しく感動したことを覚えている。
また仮想空間だからこそ知り合える仲間たちとの繋がりにも喜びを覚えた。いまとなってはどこの誰なのかさえ分からないのが悔しいが、当時高校生だった僕は、車好きで現役大学生だったお兄さんや、リアルでは劇場で照明家の仕事をしていると言っていた社会人のお姉さんとよく遊んでもらった。いつもパーティに誘ってくれ、他愛もない話題で盛り上がった。古きよき時代の懐かしい記憶である。もしかしたらいまもすぐ近くに彼らがいたりして、どこかでいつの間にかすれ違っていたりして……そんな運命的な妄想すらいまだに抱いたりするものだからMMORPGはやはり浪漫のあるゲームなのだと思ったりする。
最初のコメントを投稿しよう!