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 俺はいま、モテている。  中学生デビュー?  おそらくそれだ。  中学二年の秋、俺は確実にモテている。  小学生までを振り返ると『出来る組』には入っていなかった。入っていなかったが『出来ない組』でもなかった。 『出来る組』は、小学校でやれるスポーツに属してスタメンでなければならない。  男子はサッカー、女子はミニバスケットボール。もっと言えばスタメンでなくとも担任が顧問というだけで『出来る組』の資格が得られるのだ。  俺の担任は花壇が好きな花子先生だったし、俺自体サッカーやってなかったし、目立てるところがなかった。  ただ。 「運動能力を測りま〜す」と声高らかに花子先生が号令を出した、あの日。  俺は開花した。  多分それが因子だ。  小学六年、  神崎(かんざき)敏夫(としお)、  受賞。  いくつもの項目の基準値を満たさないともらえないものだ。どうやら俺の住む千葉県だけの“証”らしい。一般的にはスポーツテストと呼ばれていると花子先生が言っていた。  五・六年生が対象だが、五年生の俺はとれなかった。  何故なら、鼻が詰まって息苦しかったからだ。  ところが六年生の俺は、走る跳べる動ける!   驚く成果を上げたのだ。  鼻の治療が功を奏した。  低酸素で生きてきたから、高地トレーニングばりの肺活量を自然と養っていたことが役立った。  受賞の日は、みんなの俺を見る目が大きく変わる、特別な一日となった。
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