二章 「紫苑」の秘密 壱

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◇ ◇ ◇ ―――うぅっ。どれくらい寝たのだろうか。 胸がさらにズキズキしている気が・・・。てか、妙に体が暖かいような。 「うんしょっと」 ベッドの上で起きた俺は、ふと横を見た。 「・・・っ!?」 手、が、手が、手を繋いでいる・・・だと・・・!詳しく言うなら、俺たちの手は繋いであった。一緒に寝ているベッドの真ん中で。両手で、しっかりと放さないように。 「白崎くん、おはよう。起きたんだ」 「お、おはよ、う・・・?」 「なんで疑問形?」 いや、ベッドの上であの“魔族界トップ組”のこの俺が、この世で一度も見たことがない可愛い姫こと、“一ノ瀬紫苑”とこんな至近距離で手を繋いでいるとかの方が、よっぽど疑問形になるレベルッ!!! 「なぁ、手を・・・」 「まだ寝ていた方がいいよ、白崎くん。なんか、うなされていたから・・・」 訊けねぇ。どうする、この状況。打つ手は・・・、 「ゴホッゴホッ」 「咳か・・・?薬、飲んでろ」 「でも・・・」 「俺はもう体調良くなったから、帰るけど。でもお前一人にさせる訳にもいかねぇから、送ってやる」 「んっ・・・」 「ほら、おんぶしてやるから、のれ」 「・・・んっ・・・」 素直だな。こいつ、やっぱり根は可愛いな。んっ、しか言わないなんてどんだけ人見知り屋さんなんだよ。
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