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ヤンキーたち一人ひとりの拳に赤黒い液体がついていた。あっ、正確に言えば1人だけまったくついていない拳があった。
「おい、貴様ら。ここがどこか理解ってんだろうなぁ」
「ひぃぃ、こいつ桁違いにやべぇぞ!!総長に連絡だ・・・ぐはぁっ!?」
「何なんだこいつは・・・ごふぉっ!!」
ドサッ、ドサッ、と1人ずつヤンキーが崩れ落ちていくその中で、ただ1人私の目の前で、顔色一つ変えずに拳を叩き込んでいた、黒髪のフードヤンキーがいた。
顔が見えないから、どんな表情しているのかもわからない。
その人は、私がいることに気が付いたらしい。私に振り向き、言葉を発した。
「・・・お前、いつからいた?」
「あっ、えっと、その・・・最初からではないんですけど、はい、見てました」
「・・・お前さぁ、馬鹿なの?人に言われたら普通、黙っているんじゃないのかよ。変な奴」
知らない初対面のヤンキーにそれ言われたら、普通に傷つくんだけど・・・・・・。
「あの、怪我とかしませんでしたか?ていうか他の人たち血塗れですけど・・・」
「ああ、こいつらは敵だから気にすんな。ほっとけ」
「でも・・・」
「ほんとに大丈夫だから。俺もう帰るわ。じゃな」
そう言うと彼は、背中から漆黒色の翼をひろげて空に溶け込んでしまった。
「・・・何あれ」
私はポツリと呟いてから、他のヤンキーたちの手当てをして帰った。
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