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「此処」
紫苑は暫く黙りこくった後、口を開けた。
「・・・は?」
口から発せられた単語がそれか。酷いなー。
「だーかーらー、此処。日本だってば」
「・・・」
また黙り込む。余程信じられないのかよ。
「うっそだぁ、そんな訳無いじゃん。こんな経済都市が発展して、溢れ返っている日本が」
「本当だ。嘘でも何でも無い」
3秒後、紫苑が固まった。
「・・・・・・・・・ふぇっ?」
どこか拍子抜けた顔をしている。可愛い。
「まあ、遠い昔だからって保証できる訳では無い。唯、これだけは言える。日本は、昔『倭国』と呼ばれていた。だがしかし、倭国という国名もまた、もっと昔は違っていた―」
「な、なんていう国名なの?」
「それはな――、っつ!!」
「白崎くんっ!?」
突然胸の痛みが増した。おさまったのでは無いのか?いいや違う。酷くなっている。もの凄く。
「う、ゴファっ!ゴホッゴホッ!」
「・・・!血が」
「う・・・ぐっ」
「きゅっ、救急車呼ぶから・・・、」
紫苑が俺の背中から降りてスマホをポケットから取り出した。が、俺の手は言うことを利かなかった。ガシリッと彼女のスマホを掴み取り、そのまま体を抱き寄せた。
「・・・。」
「・・・ふぁ、む・・・・・・んっ!」
俺らはまたしてもキスをした。紫苑の口の中に血が混じってしまったが、俺の痛みを抑えれるのなら―、これが妥当だと俺は感じる。
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