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「だからこれは私自身の考えたことで、貴方には依頼等――」
「では、俺の依頼は無視して貴女様の依頼だけを押し切らせると、でも謂いたいのですか?」
「・・・っつ!そ、それは違いますっ!貴方に貸しをつけた訳では――」
「では、無い。そうだろ?だからどうした。そんな拒否権ブチ壊してやるよっ!!それとも何、俺の事が怖いのかああっ?」
「ち、違っ・・・う。違うっ・・・・・・!!」
「違うならさー良いよなー、これ」
スルッと音がした。それが何の音か判った時は、自分の体の血の毛がさーっと引いた。
左肩がスースーすると思ったら、タンクトップの左肩が脱がされている事に気が付いた。
「ちょ、待っ・・・!」
「待って下さい、なんてお願い聞く訳ねえだろ」
彼はそう言うと、再び私の太腿を触り始めた。どことなく小動物を撫でるようなこの仕草が私にとっては嫌だった。
腕は拘束されているし、何より左肩と両腿が犠牲になっているこの状況が拙い。
――一瞬、眼があった。
それが合図だった。
突然彼が口を開けたかと思うと、その口から見えたのは長く鋭い八重歯―否、牙であった。
彼は私を一瞥すると凄まじい速さで私の首元に噛み付いて来た。
ガプリッ。ジュルッ、ガブッ!
恐ろしい音と共に、彼の右腕は私の背中の中まで入って来た。彼の体温が、私の肌に直に伝わってしまう。
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