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 今日は、エミリーとルカスの婚約祝いパーティーが開かれる。  このパーティーは、最初はエミリーと親しい友人だけのこぢんまりとしたお茶会のはずだった。  それをどこから聞きつけたのかは知らないが、王子や生徒会役員たちに伝わり彼らも参加することになった。  王子をはじめとした名家揃いの生徒会役員が参加するとなれば、それなりの形式を整えなければならない。  こぢんまりとした女子会は、気がつけばそれなりの規模のガーデンパーティーになっていた。 「本当は女子会のつもりだったのだろう? 皆を止められなくてすまないな」 「謝らないでください。ぜひお祝いしたいだなんて嬉しいですもの」  エミリーとルカスは祝われる側なので、皆より少し遅れて会場に向かっていた。  二人が会場の入り口に到着すると、そこには深刻な顔をした人々が大勢集まっていた。 「どうかしたの?」 「な、なんでもないから。エミリーたちは気にしないで!」  ただならぬ様子に、幹事役の友人を見つけたエミリーは声をかけた。  エミリーとルカスの姿を見た友人は、しまったという顔をして慌てふためいている。 「その様子でなんでもないということはないだろう?」 「うう、実は……」  友人があまりに動揺しているのでルカスが詰め寄ると、彼女は素直に白状した。 「ええ! アンナが勝手に招待状を作って配っていたの?」 「しかも参加費まで取っていたらしいのよ」 「会場の外に人が溢れているのはそういう理由か。正式に招待した人数に合わせて準備しているのだからそうなるよな」 「いくら私に嫌がらせをしたいからって酷すぎるわ。殿下はどうなさっているの?」  友人は諦めた顔をしながら会場の奥を指差した。  王子は狭い会場内で生徒たちに囲まれてご機嫌伺いをされている。  にこやかに微笑んでいるが、内心では怒っていることが伝わってくる。
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