チャンキーヒールの女

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 所長に「休みたければ好きなだけ休め」と言われたものの、じゃあ明日からもう来ませんというわけにはいかない。  担当している案件はきちんと最後まで調査して、納得のいく報告書を仕上げたい。  だから、今週いっぱいはフルスロットルで働いて、そのあと休職する予定だ。   今度の土曜日に、早速その千冬という子に会いに行くつもりだと話すと、修司は「じゃあ、俺も行く」と言い出した。 「なんで? 調査は私が1人でやるって!」 「”殺人”なんて物騒な言葉を聞いたら、おまえ1人にやらせられるわけないだろ? 本当に初ちゃんが誰かに殺されたんだったら、その真相を暴こうとする黄菜子を犯人が放っておくとは思えない。自分がむちゃくちゃ危険なことしようとしてるって、わかってるのか?」  「わかってるよ」と答えたけど、修司に改めて言われたら怖くなってきた。  自分は調査のプロなんだから、念入りに調べれば初の死が自殺か事故か他殺かを見極められる。私が考えていたのはその程度だった。  でも修司の言う通り、犯人にしてみればチョロチョロ嗅ぎ回られて自分の犯行が明らかになったらまずいから、私のことも始末しようとするかもしれない。  よくドラマで聴く”1人消すも2人消すも同じ”って奴だ。  ということは、いつもの業務とは違い、犯人に悟られないように密かに調べなければならない。  探偵じゃないド素人の私が、たった1人でそんなこと出来るだろうか。 「だったら千冬ちゃんに訊いてみて、修司も同席していいって言われたら一緒に行ってくれる?」 「OK。予定空けとく」 「なんかゴメン。修司を巻き込むつもりはなかったのに」  私がこんな話をしたら修司は協力を申し出るだろうってことは、なんとなくわかっていたのに、結局全部話してしまったんだから私はずるい。   「俺は黄菜子の力になりたいんだ。巻き込まれたわけじゃない」 「うん、ありがとう」 「よし、帰るか。仕事、片付かないようだったら遠慮なく言えよ。何でも手伝うから」 「ありがとう」  本当に修司には何度感謝してもし足りないぐらいだ。  彼はもう恋人じゃないけど、やっぱり私の心の支えなんだと感じる。  張りつめていた糸が切れたような安堵感を覚えて、私は大きく深呼吸をしてからエンジンをスタートさせた。
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