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隣に写っているのはノエルちゃんだ。
まだ低学年であどけない顔をしている。それなのに、その小さな手が真人のシャツをギュッと握っているのを見て、私は何とも言えない気持ちになった。
こんな小さな頃から2人は一緒にいたんだ。いくつもの思い出を積み重ねて支え合ってきた。
真人は大学時代の4年間東京に住んでいたのに、きっと離れて暮らしていた間もノエルちゃんと連絡を取り合っていたのだろう。
強い強い絆。私なんかではとても太刀打ちできない。
打ちのめされて写真を見つめることしか出来ない。
「これはクリスマスの生誕劇の写真です。この年は真人くんが東方の三博士の1人を演じ、ノエルが聖母マリアの役でした」
シスターが別のアルバムを見せてくれた。
白いベールを被って跪いているノエルちゃんが幼いながらも神々しいぐらい美しくて、思わずため息が出てしまった。
初めて初がうちに来たときもそのガラス細工のような美しさに圧倒されたけど、ノエルちゃんも綺麗な子だ。正真正銘の美人さん。
賢そうな真人少年とお似合いすぎて胸が痛い。
「ノエルは母親に捨てられたと思い込んでいますけど、私は何か事情があったのだと思います。叶うならばノエルの結婚式までに母親が名乗り出てくれるといいのですが」
シスターがそんなことを言い出して驚いたけど、千冬ならノエルちゃんの両親がどこの誰なのか捜し出せるのではないかと思いついた。
「田野倉さんは赤ちゃんのときに教会に捨てられていたと聞きましたが?」
「捨てられたというよりも、預けられたと言いましょうか。礼拝堂の中に置かれていたんです。おむつは替えたばかりのようでしたし、髪や身体や衣服も清潔でした。おくるみにNと刺繍がしてあって、『名前はノエルです』という走り書きの紙が入っていました」
「名前がわかっていたのなら警察が身元を突き止められそうなものですよね?」
「生後半年ぐらいに見えたので、それぐらいの子どもの記録を当たってくれましたが見つかりませんでした。おそらく本当の名前はノエルではないのだろうと警察の方がおっしゃっていました」
「本名はノエルじゃないのになぜノエルだと書いてあったのか。不思議ですね」
首を捻りながらも、県警が日本全国のクリスマス生まれの子をちゃんと調べたのか怪しいものだと思った。
「ノエルは真人くんのおかげでいい子に育ちました。今でも仲良くて、真人くんは『結婚を考えている』と私にこっそり教えてくれたんです。自殺なんて恐ろしいことを考えるはずがありません」
力説するシスターに、私は「そうですか」と頷くのが精一杯だった。
そうなんだ。真人はノエルちゃんと結婚を……。
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