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定時連絡はなくなったものの、なんだか無性に誰かに聞いてもらいたくなった私は午後九時に【チーム初】で音声通話を開始した。
千冬はすぐに参加してくれたけど、修司は気づいていないのだろう。なかなか参加してこない。
参加してくるかどうかわからない修司を待っていられなくて、まずはノエルちゃんの身元を調べられないか千冬に訊いてみた。
「ノエルという名前からして、クリスマスかクリスマスイブに生まれたと考えるのが妥当ですよね」
「うん。本名は違うとしても、母親は娘にノエルと名付けたかったんじゃないかな。ノエルちゃんは今22歳。発見された6月6日を誕生日として戸籍が作られたそうだから、実際の誕生日はその前の年のクリスマスだと思う」
「わかりました。あとで調べておきます。それより姉御……ショックですよね。神坂がノエルと結婚を考えてるなんて」
千冬の気遣うような口調に、力なく「うん」と答えた。
シスターから聞いたときもショックだったけど、どんどんどんどん心が重くなっていく気がする。
「姉御が消えてからまだ半年しか経ってないのに、もう次の女との結婚を考えるって早すぎません?」
ムッとしたような千冬に「仕方ないよ」と短く返した。
「まあ……神坂は姉御が突然いなくなって裏切られたと思ったでしょうから、幼なじみのノエルに慰められて優しくされてコロッといっちゃったんでしょうけどね」
「信じられるのはノエルちゃんだけだと思ったとしても不思議じゃないよ。元々、私と出会う前も元カノたちは金づるで、本当に心を許せる相手はノエルちゃんだけだったんだからね」
「姉御と神坂は縁がなかったってことですよ。世の中には神坂よりいい男がいっぱいいますから!」
真人よりいい男がいるとは思えないけど、「そうだね」と頷いた。
縁がなかったというよりも、せっかく真人が結んでくれた赤い糸を私が切ってしまったんだ。
「それより! 六道さんから聞いた話が凄くてさ」
六道さんから得た情報を順を追って千冬に話すと、やっぱり彼女も【遠藤晴人】の名前に驚いていた。
「へえ! 何だか因縁めいたものを感じますね」
「まあ、真人のお父さんも安納寺出身でうちのお母さんと同い年なら、同じ小学校に通っていたとしても不思議じゃないよね」
当時、安納寺市内には公立の小学校が3つしかなかったから、1/3の確率だ。
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