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今夜にでも修司と千冬に許可を取って、なるべく早いうちに真人に話すことにしよう。
どこまでどう話すかは、修司たちと相談して決めればいい。
そう決意したら、驚くほど心が軽くなった。
「臼井ちゃん、ありがとう。ずっと霧の中にいたみたいにモヤモヤしてたのが、スッキリ晴れてきた感じ。それとごめんね」
「え? 何がですか?」
「修司に浮気されたことも許したのにダメだったことも、あの頃悩んでたこと全部言えなくて。今みたいに臼井ちゃんに相談していれば良かった」
よく”女は正解じゃなく共感を求めている”なんて言うけど、私はむしろ逆だ。迷って悩んでいたら道筋を示してほしい。
たとえそれが結果的に正しい道じゃなかったとしても、同じ場所で足踏みしながらウダウダ悩んでいるよりはずっといいと思う。
「あのときは……何も言ってくれないなんて水臭い!って本当に腹が立ったけど、後になって冷静になったら私が宗形さんとスムーズに仕事をするためには仕方なかったのかなと思いました。黄菜子さんの配慮だったのにいつまでも子どもみたいに拗ねていて、私こそごめんなさい」
「ううん。仲直りしてほしいってずっと思ってたのに、上手く切り出せなかった私が悪い。年取るとタイミングを見計らってるうちに、どんどん時が経っちゃうんだよね。……歳のせいにしちゃダメか」
「そんなことない。大人になると余計なことをあれこれ考えて、子どもの頃は簡単に出来てたことが出来なくなるもんですよね」
「……じゃあ、仲直り?」
「もちろん!」
ほろ酔い気分でふざけてハグしたら2人とも泣けてきちゃって、涙が私たちの間にあったわだかまりを全部流してくれたみたいだった。
臼井ちゃんと「次は私の家でタコパしよう!」と約束して別れ、帰宅してから修司に電話した。
「というわけで怪我の功名っていうのかな? 臼井ちゃんとの関係は修復できました。修司にはずっと心配かけてたから、ご報告まで」
「良かったなぁ。元はと言えば俺のせいでギクシャクしてたから、本当に良かった」
ホッとしたように「良かった」を繰り返す修司は、結構気に病んでいたのかもしれない。
「修司のせいじゃないよ、臼井ちゃんと私の問題。ところでさ、タコ焼き器ってどこにしまったか憶えてる?」
私のマンションは狭いから収納場所なんて限られているのに、キッチンはもちろんのことクローゼットの中にもベッドの下にもなかった。
「あれは俺がもらったよ。黄菜子が『もうタコ焼きパーティーなんてしないから持ってって』って言ったよな?」
「ああ、そうか」と膝を打つと、電話の向こうから「なあ、俺たち、やっとこういう話が出来るようになったな」というしんみりした声が聞こえてきた。
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