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結局量が多すぎて買い物カゴ二つでも足りなかったので、入りきらなかったものは購入を断念した。
「私も片方持ちますよ?」
藤子さんはソーセージが山盛り乗ったカゴを掴もうとするが、こんなに重い物を持たせるわけにはいかない。
「いいえ。こういう時の為に僕は鍛えていますので、これくらい平気です」
このまま藤子さんをおんぶしてショッピングを続けることだって可能だ!ああ…、叶うことならおんぶして差し上げたいっ!
「仁科さん、本当にお強いんですね」
「ふ、藤子さん…」
今、藤子さんに感心の眼差しを向けられている気がする。ああ…、う、嬉しい!
藤子さんに頼れる男だと認識してもらえているのだろうか。
ああ藤子さん!何かあった時はこの僕を、誰よりも先にこの僕を一番に頼ってくださいね。
そんなことを思いながら冷凍うどんをカゴに入れると、店内アナウンスが流れた。
「みなさま!みなさまみなさまーっ!なんと五分後に広告商品の蕎麦の生麺のタイムセールを開催いたします!一袋なんとなんとの10円!破格の10円でございます!おひとり様5袋までとなっております!開催場所は鮮魚コーナーの前でございます!どうか人間としてのマナーを守り、気遣いを忘れず、暴力反対の精神でくれぐれもお願いいたしますっ!怪我をされたら自己責任でお願いしますっ!」
野球中継でホームランを打った様子を実況するようなテンション高めの放送が終わると、店内で和やかに買い物をしていた方々の目の色が闘争心を燃やしたような色に変わった。
そして一斉に鮮魚コーナーを目指すではないか。
みんな狩りに行くんだなと他人事のように見ていた僕だが、ふと藤子さんへ視線を向けると、何故かショックを受けたような表情をしていた。
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