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かくして優勝者に直々にそば袋を五つ手渡され、握手の権利まで勝手に付け加えられたので、骨が砕けそうな程痛い握手をされ、僕はやっと狩りゲームから生還し、愛おしい藤子さんのもとへ戻ってきた。
「なんか、盛り上がってましたね」
「はい…」
藤子さんの近くに戻ってこれた安心感はあれど、やはり疲労感もあった。
僕の表情が気になったのか、藤子さんが顔を覗き込む。
「大丈夫ですか?」
ふぁああっ、その上目遣い!
癒やし度100パーセント!ハピネス!
「大丈夫です。今、とっても元気が出ました。はい、これ蕎麦袋です。五つちゃんとあります」
「すみません…。私のせいであんなに大変なことになっちゃって…」
「いえ。藤子さんの為なら僕は何もいとわないですよ」
正直に言うと、藤子さんの頬に僅かに赤みが差した気がする。
気のせいかもしれないが、気のせいだとは思いたくない。喜んでくれているんだ、照れているんだと思いたい。
「でもすごかったですよ仁科さん。かっこよかったです」
「ほ、本当ですか」
「はい」
ああ、嬉しい。今の言葉は録音して僕の目覚まし音にしたい!絶対秒で起きれる!
藤子さん。その笑顔と言葉を頂けるなら、僕は何度でもあの狩りゲームに挑戦しますよ。
とは思ったが、やはり久しぶりに妙な恐怖感を味わったので、暫くは遠慮したい。
軽くトラウマになった気がする。
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