なんちゃってラブラブショッピング

10/13

2264人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
 かくして優勝者に直々にそば袋を五つ手渡され、握手の権利まで勝手に付け加えられたので、骨が砕けそうな程痛い握手をされ、僕はやっと狩りゲームから生還し、愛おしい藤子さんのもとへ戻ってきた。 「なんか、盛り上がってましたね」 「はい…」  藤子さんの近くに戻ってこれた安心感はあれど、やはり疲労感もあった。  僕の表情が気になったのか、藤子さんが顔を覗き込む。 「大丈夫ですか?」  ふぁああっ、その上目遣い!  癒やし度100パーセント!ハピネス! 「大丈夫です。今、とっても元気が出ました。はい、これ蕎麦袋です。五つちゃんとあります」 「すみません…。私のせいであんなに大変なことになっちゃって…」 「いえ。藤子さんの為なら僕は何もいとわないですよ」  正直に言うと、藤子さんの頬に僅かに赤みが差した気がする。  気のせいかもしれないが、気のせいだとは思いたくない。喜んでくれているんだ、照れているんだと思いたい。 「でもすごかったですよ仁科さん。かっこよかったです」 「ほ、本当ですか」 「はい」  ああ、嬉しい。今の言葉は録音して僕の目覚まし音にしたい!絶対秒で起きれる!  藤子さん。その笑顔と言葉を頂けるなら、僕は何度でもあの狩りゲームに挑戦しますよ。  とは思ったが、やはり久しぶりに妙な恐怖感を味わったので、暫くは遠慮したい。  軽くトラウマになった気がする。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2264人が本棚に入れています
本棚に追加