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近所のスーパーマーケットに到着し入り口のガラス戸を抜けると、仁科さんが買い物カゴを掴み取った。
「何を買いますか?」
「長ネギとしめじと、あと糸こんにゃくですね」
「あ、そうだ。藤子さん、すき焼きの締めはどうしますか?」
「締めはぁ…」
蓬田家の鍋物の締めはいつも決まってうどんだけど、仁科さんは何派なんだろう。
「仁科さんは何がいいですか、締め」
すると目を輝かせて「せーので言ってみませんか?」と提案してくる。
急に少年みたいな笑顔を向けられ、当然脈は跳びつつ、うんと頷く。
「ではいきますよ。せーの」
仁科さんの掛け声の次に出たお互いの言葉は、見事に「うどん!」で一致した。
あまりに綺麗に声が重なったので一瞬唖然として、次にはお互い吹き出して笑う。
「あはは。ハモりましたね」
「ですね」
「じゃあうどんで決まりですね」
「そうしましょう」
笑いの名残を噛みしめるように二人してニコニコ笑いながら野菜コーナーを進んでいく。
目当ての長ネギを探しながら、仁科さんとは不思議といつも好物が被るなぁと、また見つけた共通点に嬉しくなる。
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