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そんな自分のダメっぷりに内心自嘲していると、お目当ての長ネギを見つけた。
僕がヤバい男だということを露程も知らない藤子さんは、なんの警戒心もなく僕の隣に寄って来て、長ネギを一緒に選んでくれる。
そうして腕が当たったり、花の香りを藤子さんの髪から嗅ぎ取ってしまえば、興奮と喜びでいっぱいになり早速僕の罪の意識は端へと追いやられてしまう。
だって最高過ぎるじゃないかこのシチュエーション!
いつもはスーパーに入る藤子さんを後ろからひっそりと護衛しつつ、藤子さんが触れた商品を購入したり触ったりする僕が、今日は隣に並んで買い物をしているなんてっ!
夢にまで見た、きょ、共同作業!
僕が買い物カゴを持ち、藤子さんが一緒に選んだ長ネギを入れる。ふぁあああっ!
これ夫婦感しかなくないか!?長年連れ添った仲睦まじい夫婦感しか醸し出していない気がする!絶対そうだ絶対そうだ!
誰か僕たちの甘いショッピングの一部始終を、いや、一部と言わず最初から最後まで動画に収めて、ドキュメンタリー風に編集してくださいませんかっ!?お金払いますから!
だが、藤子さんに怪しまれずに誰かに頼むタイミングがない。こうなるとわかっていたら誰か盗撮が得意なカメラマンを雇ったのに…!
無念な気持ちはあったが、しめじと糸こんにゃくを真剣な眼差しで選ぶ藤子さんをこんな間近で見ることができるのだから、幸福感にやはり胸は支配される。
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