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「いらないことをするな。絶対に警察も救急車も……」
「そんなこと言ってられるの?!」
つい声を荒げてしまい、少し奥まっているとはいえ、チラチラと人々がこちらを見ている。
きっと、一緒にいた女性絡みで何かあったのだろう。
確かに、いろいろバレたらいけないことがあるのかもしれない。私は持っていたバッグからハンカチを出すとそこをギュッと縛り、手のひらの血をウェットティッシュで拭く。
きっとシャツにも血液がついているのだろうが、黒ということでぱっと見ただけではわからないと思う。
「立てる?」
彼をなんとか立たせると、すぐに目の前からタクシーを拾い彼と一緒に乗り込む。
「おい、ちょっと」
「お願いします」
彼が何か言おうとしたが、それを無視すると私は自分のマンションの住所を告げた。
自分でもどうしてこんな行動をしているのかもわからない。面倒なことは放置すればいいし、さっさとあの場所を離れて、警察に電話でもすればいい。
そう頭ではいっているのに、SHINに似ていたからだろうか。
自分でもまったく理解のできない行動だ。人助け。弱ってる人を見捨てられないだけ。
そう言い聞かして、私は彼を自宅へと連れて帰った。
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