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黒のデニムにネイビーブルーのセーターの軽装。寒さ対策に薄手のダウンジャケットを腕に掛け歩き出した。185センチある身長は、乗り物の乗り降りのときに、頭をぶつけないようにと気を使うことがある。
飛行機から降りて、足早にターンテーブルに向かい、幸い早めに出て来た荷物をピックアップする。
決心が鈍らないうちにスマホを取り出し、意を決して彼女の番号をタップした。
──この時間だと仕事をしているだろう。迷惑になると思うけど、逸る心を抑えきれない。これで、繋がらないならあきらめる。
コール音が鳴り出した。
1回、2回、……。
──もしかしたら、出ないかも……。
3回、4回、5回……。
気持ちが沈み、コール音を数えながら、うつむき加減で到着ロビーの自動ドアを抜けようとした。
6回、7回。
──これは、あきらめるしかない。
そう思った瞬間。コール音が途切れた。
『もしもし……』
彼女の柔らかな声が聞こえて来る。
「……あいさん?」
あきらめようと決めた自分に奇跡が起きたと顔を上げた。
そこで、さらなる奇跡が起きていた。
目の前に彼女がいたのだ。
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