0

2/2
前へ
/155ページ
次へ
 黒のデニムにネイビーブルーのセーターの軽装。寒さ対策に薄手のダウンジャケットを腕に掛け歩き出した。185センチある身長は、乗り物の乗り降りのときに、頭をぶつけないようにと気を使うことがある。  飛行機から降りて、足早にターンテーブルに向かい、幸い早めに出て来た荷物をピックアップする。  決心が鈍らないうちにスマホを取り出し、意を決して彼女の番号をタップした。 ──この時間だと仕事をしているだろう。迷惑になると思うけど、逸る心を抑えきれない。これで、繋がらないならあきらめる。    コール音が鳴り出した。  1回、2回、……。 ──もしかしたら、出ないかも……。  3回、4回、5回……。  気持ちが沈み、コール音を数えながら、うつむき加減で到着ロビーの自動ドアを抜けようとした。  6回、7回。  ──これは、あきらめるしかない。  そう思った瞬間。コール音が途切れた。 『もしもし……』  彼女の柔らかな声が聞こえて来る。 「……あいさん?」  あきらめようと決めた自分に奇跡が起きたと顔を上げた。 そこで、さらなる奇跡が起きていた。  目の前に彼女がいたのだ。    
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1467人が本棚に入れています
本棚に追加