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南ウイング出会いの広場。
顧客の出迎えに来ていた蜂谷愛理は、自動ドアの向こうから、歩いてくる人物を見つけ、息を飲み込んだ。
アッシュグレーの髪色、そのシルエットは記憶の中の彼と重なる。
福岡へ出張した夜に、夫と友人の不倫関係を知り、そのショックからマッチングアプリを利用してしまった。そこに現れたのは、偶然にも前日、ヘアカットをしてくれた美容師の北川だった。
優しい手にふれられ、女性としての自信を取り戻させてくれた。そして、大事に扱われたことで、自分を大切にしていこうと思えたのは、北川のおかげだと思う。
短い時間を一緒に過ごしただけの関係。でも、確かに恋だった。
それは、胸の奥底にしまって置いて、時折、思い出しては懐かしむような恋。
福岡と東京の遠い距離、二度と会えないものだと愛理は思っていた。
耳にあてたスマホからは北川の声が聞こえて来る。
『……あいさん?』
愛理の心臓は、痛いぐらいに早く動き出している。
視線の先にいる北川が顔を上げ、驚いたように目を見開く。
運命のいたずらとしか思えない出来事に、愛理は身じろぎひとつせずに立ちつくしてしまう。
「KENさん……」
目の前に北川が居るのを信じられない思いで名前をつぶやいた。すると、彼の形の良い唇が動く。
「会いたかった」
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