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 ケガの状態が落ち着いた義母は、ベッドに固定されていた状態から、車椅子の使用がOKになり、行動範囲が広がって上機嫌だ。  愛理が車椅子を押し、ふたりは大冒険さながらの気分で、売店まで買い物に行き、雑誌やペットボトルの紅茶を買った。部屋に戻り、紅茶で乾杯しながらマカロンを頬張り、TVドラマや美容の話で、話題は尽きない。あっという間に時間が過ぎていく。  淳と離婚した日、義母は”娘がダメならお友達になってくれるとうれしいわ”と言ってくれた通り、いまでは年の離れた良き友人として愛理に接してくれていた。 「愛理さん、部屋を借りたんですってね。住み心地はどう?」 「え、あっ、はい、新しい家具がやっと入って、部屋らしくなりました。退院したら、ぜひ遊びに来てください」  義母からの不意の質問に、まさか、翔の部屋に入り浸りで、新しい部屋には着替えに帰っているだけとも言えず、焦った愛理はしどろもどろだ。   「翔の部屋の近くに借りたって、聞いたわよ。あの辺りは便利で良いわよね」 「は、はい。翔くんの部屋を借りていたときに、近所の不動産屋さんに声をかけて紹介された部屋なので……」 淳と離婚したばかりなのに、弟の翔と付き合い始めましたと義母に告白するのには、時間と勇気が必要で、愛理には、そのハードルが高く感じられ、焦ってしまう。 しかし、愛理の様子を気にするでもなく、義母はふふっと笑い言葉を続けた。 「近所だと万が一、病気やケガをしても助け合えるから安心で良いわよ。翔に何かあったときは、よろしくね」 「はい、でも、翔くんには、私の方が助けてもらってばかりなんですよ」 もしかして、翔との関係に気づかれたのでは? と、愛理の鼓動はドキドキと早く動きだしていた。  
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