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病弱さを理由に、「お前はみんなと違うから」と、受け入れてもらえなかった過去もある。
しょっちゅう喘息の発作をおこすものだから、入院生活も短くはなかった。
「人も病気も怖かった。だから外が怖かった。でも、矢口先生にオンラインでも授業が受けられるって聞いたんだ。先生は学校のカメラで配信するよって言ってくれたんだけど、どうせなら自分のカメラを教室に置いてもらおうと思って、病室で白猫のロボットを作ったんだよ」
「ロボットを作るなんて、ホワイト凄いんだね」
「図鑑を見ながらだけどね。でも、ただのオンライン授業の連続だったらきっと続かなかったと思う。君がいてくれたから。いつも僕を運んでくれたから。楽しくって、頑張れたんだ」
「私こそホワイトと過ごせて楽しかったよ。中に人がいるんだよってトシキやマリに聞いたけど、あの時はよく分かってなかったわ」
高校生になった朱音はようやくその意味がわかりつつあるところだった。
ホワイトの中......カメラの向こうにはずっと、同い年の少年がいたのだ。
一生懸命授業を受けていたのだ。
「僕には無理だと思ってた進級式や卒業式は、全部朱音ちゃんのおかげで参加できたんだ。本当に、ありがとうね」
ホワイトがぺこりと頭を下げるので、朱音は気恥ずかしくなった。
「なんだか......。ずっと一緒にいたのに、やっとホワイトに会えた気がする」
「その名前はもう卒業。今日からはさ、真白って呼んでよ」
「真白?」
「僕の名前」
「ああ、ごめんね!本当の名前を聞いてなかったんだわ」
にっこりと笑った真白に朱音は右手をさし出す。
改めて、はじめましての握手だ。
自分の両手に収まっていたホワイトが、同じくらいの背丈になっていて朱音の心は不思議な色に染まる。
タイミングよく、聞きなれたリズムで学校のチャイムが鳴り響いた。
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