三つ子のシェアハウス

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一人取り残された愛菜は膝を抱えてうずくまる。 ―――レンちゃんが蓮夜くんじゃなかったなんて・・・。 ―――てっきりそうだとばかり思っていたからか、こんなに心が冷めていくとは思ってもみなかった。 ―――でもそれだけ私に本気だったということなんだよね? ―――ちょっと突き放し過ぎちゃったかな・・・。 ―――『好きになってくれてありがとう』ってお礼くらい言えばよかった・・・。 ベランダで一人でいるとまたもや背後から物音がした。 「・・・蓮人、くん?」 振り返るとそこには蓮人が心配そうな表情で立っていた。 目が合い咄嗟にそらすよう前を向く。 「そこで何やってるの?」 「ううん、何も」 「もしかして泣いてる?」 「・・・」 否定することができなかった。 蓮人は何も言わずに蓮夜が座った反対側に座った。 ―――・・・気まずい。 少しの沈黙を破ったのは蓮人だった。 「蓮夜兄さんに何か言われた?」 「え・・・」 「さっき廊下で蓮夜兄さんを見かけたから」 「・・・うん、ちょっとね」 「蓮夜兄さんが人を泣かせるなんてね。 普段優しいからそういうことはないと思ったのに」 そこまで言うと蓮人は気まずそうに尋ねてきた。 「・・・もしかして蓮夜兄さんに振られた、とか?」 「ううん、そういうわけじゃないよ」 「・・・そっか」 そう言う蓮人はどこか安堵した表情を浮かべていた。 「何があったのかは知らないけど蓮夜兄さんが人を悲しませるなんて俺からしたら有り得ないんだ。 だからちゃんとした理由があるんだと思う」 「・・・うん」 「だからそんなに気を落とさないで。 愛菜のせいじゃない」 「ッ、ありがとう・・・」 また呼び捨てにされドキリとしてしまった。 ―――こんな状況なのに、私・・・。 蓮人に名前を呼ばれることなんて普段はないため驚いてしまった。 「・・・ねぇ、愛菜。 俺を選んでよ」 「・・・」 「俺なら愛菜にそんな悲しい顔はさせない。 兄さんたちとは違って俺は感情を表現できないから考えていることが分かりにくいかもしれないけど、愛菜を想う気持ちは本当だ。  愛菜のこと真剣に好きなんだ」 改めて告白され涙が出てしまった。 「・・・俺じゃ駄目?」 複雑な心境のため蓮人の方へ素直に向けない。 すぐに答えを出すことなんてできるわけがない。 ただ蓮夜が“レンちゃん”ではないということは、蓮人も可能性があるということ。 もしかしたら本当に三人の中に“レンちゃん”はいないのかもしれない。 いや、いない方が自然なのだ。 ただどこか期待している自分がいる。 「ごめん、そんなに泣かせるつもりはなかったんだけど・・・」 愛菜は首を横に振る。 「ちょっと待ってて。 涙を拭くもの持ってくる」 「あ、いいよ! それなら私が持ってるから」 取りに行かせるのが申し訳なくてポケットからハンカチを取り出そうとした。 「あ・・・」 だがその時レンちゃんから借りていたハンカチが落ちてしまった。 慌てて拾い上げ埃を払う。 自分のハンカチを取り出そうとしたら一緒になって出てきてしまったらしい。 「・・・それ」 「?」 何かを言いそうな蓮人の方を見る。 蓮人は愛菜が持っているハンカチを見て言った。 「それ、蓮司兄さんの」 「・・・え?」 その言葉に目を見開いた。 「蓮司くんの? え、どういうこと? このハンカチは蓮司くんのものなの!?」 そう言ってちゃんと確認するように蓮人の目の前にハンカチを持っていった。 「え、うん。 小さい頃になくしてお母さんに怒られていた記憶がある」 「ッ・・・!」 そう言われ居ても立っても居られなくなった愛菜は蓮司のもとへと駆けた。 「ちょっと待って、愛菜!!」 蓮人は走り出す愛菜を呼び止めた。 だが愛菜は止まることなくリビングを出る。 「・・・それが愛菜の答えか。 俺は選ばれなかったんだな。 ハンカチのことなんて・・・。 いや、それを言っても仕方ないか」 ベランダで一人になった蓮人は小さく息を吐いていた。
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