三つ子のシェアハウス

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夕食後は蓮人抜きで三人はリビングに集まって談笑していた。 蓮人は人数が多い時は基本的に輪から外れている。 そういうものなんだと愛菜自身は考え、無理に誘ったりもしないようにしていた。 愛菜もシェアハウスへ来るまではどちらかというと一人を好むタイプだった。 友達はいるがあくまで通常の付き合いの範疇で一緒に寝泊まりすることなんてまずなかった。 実際、こうしてシェアハウスで上手くやっていけていることに自分自身驚いている程だ。 ―――自分の好みなんて、自分でもよく分かっていないものなのかも。 スーパーで試飲して値段の割に美味しいと思った紅茶を入れ一息つく。 どうやら二人も気に入ってくれたようだ。 「もう愛菜がここへ来て一ヶ月になるのか」 「早いものだね。 男の三人兄弟でむさ苦しい日々を過ごしていたから、女の子が一人入るだけでも大分変わる」 「それに愛菜のおかげで毎日が楽しいしな」 「それに料理も美味しいし!」 自分のことを褒められて笑っているのを見ると、どうしても照れてしまう。 ―――嬉しいけどこんなに面と向かって褒められるのは恥ずかしいな。 愛菜も素直に喜んでいると、その空気を断ち切るようにバンッとドアが開きそこから蓮人が顔を出した。 ―――びっくりした。 ―――そんなに音を立ててどうしたんだろう? 「蓮人? 珍しいね、愛菜ちゃんがいるところに来るなんて」 「宣戦布告する」 「宣戦布告?」 「愛菜は俺がもらうから」 「「・・・」」 ―――・・・え? そう言うと驚くこともなく兄二人の顔つきが変わった。 ―――え、ちょ、何堂々と宣言しちゃってるの!? ―――あの告白っぽいのを受けてからまだ気持ちの整理がついていないのに・・・! それを聞いた蓮司はニヤリと笑う。 「へぇ。 ライバルは蓮夜だけだと思っていたけどまさかの蓮人もか」 「本当に意外だね。 蓮人が今まで顔を出さなかったのはあれかな? 僕たちが愛菜ちゃんと話をすると嫉妬しちゃうから?」 その言葉に蓮人は少し蓮夜を睨む。 二人の様子を見ながら楽しそうに蓮司が言った。 「言っておくけど俺も負けないからな。 恋愛だけは弟に譲らねぇ」 「僕だって。 グイグイいく二人には勝てないかもしれないけど、これでも愛菜ちゃんの中で僕の評価は高い方だ」 愛菜の考えを無視するかのように三人は争っていた。 ―――えぇ!? ―――いや、蓮司くんも蓮夜くんも同じ気持ちとか知らなかったんですけど!? ―――というか蓮司くんって私に意地悪してきていなかったっけ・・・!? ―――もしかして愛情の裏返しとかだったりするのかな? 「愛菜はもう返事決まっていたりするか?」 テンパっていると蓮司に問われた。 「突然そんなこと言われても私は・・・」 今までのことを思い出す。 ―――三人の中で印象が一番いいのはそりゃあ蓮夜くんだよね? ―――元々レンちゃんには会ってお礼を言ってハンカチを返したかっただけで、恋愛感情を抱いていたわけじゃない。 ―――それでも蓮夜くんのことを考えると胸が高鳴っちゃうのは、やっぱりそういうことだよね・・・? ―――でもそれは三人の中での話で、恋でというのは違う気がする。 ―――まだ知り合って間もないし・・・。 ―――いや、ハンカチのことを思えば蓮夜くんとはずっと前から知り合っていたということになるわけで。 いきなりのこと過ぎて頭の中が上手く整理できない。 ただ一つ言えるのは今ここで答えを出せるような話ではないということだ。 愛菜は蓮司の問いに首を横に振った。 「まぁ、そうだろうな。 今まで愛菜は俺たちのことを恋愛対象として見ていないだろうし」 「でも宣言してきたということは僕も本気になっていいんだよね?」 蓮夜の言葉に蓮人が返した。 「いいよ。 兄さんたちが本気でも俺の気持ちは変わらないから。 絶対に負けない」 蓮人はそう言うとこの場から離れていった。 つられて蓮司と蓮夜も立ち上がる。 ―――え、私を一人にするつもり!? 「じゃあここからはもうライバルだな。 愛菜に怖い目に遭わせるのは違うから気を付けろよ?」 「僕がそんなことをするはずがないよ。 また後でね、愛菜ちゃん」 二人もリビングを出ていった。 ―――これって強制的に返事をしないといけないヤツじゃん・・・! ―――こんなのどうやったってこの先、いいことになるわけないよ・・・。 自分のせいで三人の関係が崩れてしまった。 今後は更に滅茶苦茶になる可能性がある。 そう考えるとたとえ誰かを選びたい気持ちになっても、全員断ってしまうかもしれないと愛菜は考えるのだ。
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