夏の音を聴かせて

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思わず声を上げて笑った私は、この会話のテンポに懐かしさと心地よさを感じていた。それと同時に心は、すぐに切なくなる。 もうあの頃とは、違うから。 あの頃に戻れるわけじゃないから。 来斗は、レモンティーを飲み終わると、ふと真顔になる。吸い込まれてしまいそうだ。初めて会ったあの日みたいに。 思わず、そらした私の横顔目掛けて、来斗の声が降ってくる。 「なぁ、夏音……なんで絵やめた?」 聞かれると思っていた質問なのに、いざ聞かれたら、すぐには答えられない。 「……答えたくない」 来斗が、小さく溜息を吐き出した。 「いつやめた?俺は聞く権利あるだろ?」 来斗の声が、あの日と重なっていく。 「言えよ」 「飽きたから」 来斗の顔が、一瞬で怒りに変わる。 「マジで言ってんの?」 「当たり前でしょ」 「……ふざけんなよっ!何のために俺ら別れたんだよっ!俺は……別れてからずっと……夏音が、忘れられなかった」 そんな事言わないでよ。 私だって、何度も何度も来斗の名前を液晶画面に浮かべたまま、眠れない夜を過ごした。 会いたくて、声が、聞きたくて。 側にいて欲しくて。
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