夏の音を聴かせて

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三浦運送で働き始めてから三か月。 あれ以来、来斗とは事務所で、仕事の話をすることも、二人きりで話すことも、目を合わせることもなかった。 「南さん、今日で終わりなんて寂しいわね」 和穂が、寂しそうに眉を下げた。 「そうですね、あっと言う間で私も寂しいです。短い間でしたが、お世話になりました」 「こちらこそ、ありがとうね」 私は、事務所の時計が十八時になるのを確認してから、少ない荷物を纏め始める。 来斗は、配達からまだ戻ってこない。最後に挨拶だけは、したかったけれど仕方ない。 「ねぇ、余計なお世話かもしれないけれど……来斗君とは恋人同士だったの?」 「え?」 驚いて和穂を見れば、和穂が、すぐに、微笑み返した。 「やっぱり、そうだったのね。来斗君の南さんを見た時のあんな顔……初めてだったから。まだ……梓ちゃんと、あ、来斗君の奥さんなんだけど、二人が付き合う前にね、来斗君の忘れられない女の子の話を聞いたことがあって」 「忘れられない、女の子?」 思わず片付けをする手が、止まる。 「えぇ。夏が来るたび思い出す、『夏』が、名前についた女の子で、画家だって言ってたわ。南さんの履歴書に、芸術大学のアート専攻で卒業の記載があったから……二人の関係は、特別なものだったのかなと何となく気づいてしまって……」
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