夏の音を聴かせて

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「あー、この間、試合で負けたから、サボり」 「え?市大会?」 来斗が、制服に砂がつくのも構わず、ゴロンと寝そべった。照りつける太陽の光に眩しそうに目を細めた来斗に、私の鼓動は、今度こそ大きく一跳ねした。 「夏音も転がれば?」 私は、来斗から、腕二つ分は、優に離れてから、同じように寝そべった。砂の布団は、波の音が子守唄代わりに聴こえてきて思っていたよりも、寝心地が良い。 風が吹けば、来斗の男の子特有のお日様みたいな匂いが鼻を掠めていく。 来斗は、耳を澄ませるように、瞳を閉じると少しだけ黙っていた。 (来斗、優勝できなかったんだ) プールサイドで来斗を描いていた時、他の水泳部員が、今度の市大会で優勝したら、競泳に特化した大学のスポーツ推薦が貰えると話していたのを私は、小耳に挟んでいた。 「懸けてたんだよな、この間の試合。努力したつもりだったし、自信もあったんだけどさ、去年優勝したのもあって、どっかで驕ってたのかな。二位じゃ意味ねぇんだよ」 私は、さっき送られてきた絵画コンクールの結果発表のメールが頭をよぎった。 「分かる。二番目じゃ意味ないの」 「え?絵画コンクール、ダメだったとか?」 来斗は、起き上がると、左手を砂浜についたまま寝転んでる私を覗き込んだ。 「何で、来斗その事……」
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