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 喫茶店を出たあとも、野川は何度も頭を下げながら去っていった。その様子を緋影が腕を組みながら眺めている。 「ほんとうに、もとは良い子なんだろうねえ。……君みたいだね、恭親」  意地悪い笑みを浮かべて、恭親へ顔を寄せる。恭親は黙ったまま振り返って歩き始めた。緋影はふわふわと宙に浮いてついてくる。袴の裾や着ている羽織が軽やかに翻った。 「しかし傑作だね、君が清算なんて言葉を使うとはさ」 「……」 「フフフ、君はいつになったら清算できるのかな。フフフ」  恭親は横目で緋影に目をやった。緋影は楽しそうだった。口元を着物の袖で隠して、クスクスと笑っている。恭親は目線を前に戻して雑踏に紛れていった。霊体の女をそばに連れたまま。
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