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女の名前とマンションがわかれば、素性を調べるのはさほど難しくない。
何でも屋、なんて言ってみても、依頼の半分はいわゆる探偵に通ずる内容。
浮気調査、素行調査、人探しなど。
残りの半分は収入を切らさないための、ホスト時代の人脈を生かした仕事。
レンタル彼氏というもので、パーティー同伴がメイン。
あとは、買い物代行や運転代行、ペットを散歩させるとか預かるとか。
儲かりはしない。
だが、同じクラブで働いていた遼平さんと一緒に仕事をするのは楽しい。
彼はなろうと思えばなれただろうにナンバーワンにまったく興味を示さず、客を選り好みしてはよく怒られていた。
なのに、毎月ナンバーツーかスリーの売り上げで、どうしてそうなるのかがみんな不思議だった。
遼平さんは女に媚びたりしない。でも見下しもしない。
女嫌いのくせにスカウトされて、金のためだけにホストになった俺に言ったことがある。
『どんだけ嫌ってもさ? 所詮俺らみんな女の腹から生まれてんじゃん。子供が欲しかったら、女に産んでもらうしかないし。嫌ったって縁は切れないんだし、だったら嫌う労力もったいなくね? 男だってムカつく奴はいるし』
何となく、本当に何となくモヤモヤしていた胸の中が少しだけ晴れた気がした。
遼平さんの真似をして客を選んだら、怒られたけど。
遼平さんがクラブを辞めて何でも屋を始めると言った時、みんなが笑った。が、俺はついていきたいと言った。
彼といたら、姉ちゃんのいない生活の寂しさが少しは紛れる気がした。
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