プロローグ

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プロローグ

 夫婦の寝室は、もう長く夫の寝室でしかない。  妊娠してから、子供が生まれてから、夫婦が寝室を別けるのは珍しいことではないだろう。それが、七年続いているだけ。  近頃はセックスレス夫婦が多いと、ワイドショーの特集で見た。我が家も同じ。  だった。  私は今夜、夫に抱かれた。  正確には、犯された。  夫婦間でもレイプは許されないそうだ。  私の夫は知らないようだが。 「欲情しないって......言ったくせに......」  私は一糸まとわぬ姿で、ベッドの足元側のカーペットの上に座っていた。  見上げると、羽毛布団でできた小高い丘。中には、酔い潰れた夫。  いびきがうるさい。  とても、うるさい。  髪が首筋にまとわりつく。  それを手で払うと、その手が頬に触れた。  わずかに痛む。  掌で頬を包むようにそっと触れた。  夫に殴られた。  殴られ、手首を強く掴まれて組み敷かれ、アルコール臭を嗅がされた。  気持ち悪かった。  それは、私がお酒に極端に弱いからか、臭いの元が夫だからか。 「欲情しないって......」  夫は確かに言った。  私は確かに言われた。  もう、三年は前だが。  なのに、私の膣が裂けんばかりに悲鳴を上げるほどの重量で、押し()ってきた。  何度も。  何度も。  暴れて膝が夫の腹に当たると、夫はまた私を打った。  酔った夫の瞳は虚ろで、何を言っても無駄だと諦めたのは、暴れるほど膣内が痛むから。  痛い思いを増してまで暴れるより、大人しくして早く終えてもらおうと思ったから。  思ったのに、そうはならなかった。
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