1.疑い

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「――大丈夫だって。ホント、口うるさいな」  弘毅さんがため息交じりに言う。  声のトーンや言葉遣いでパパの不機嫌さを察知した幸大が、私の服の袖を掴む。私はその小さな手をそっと握った。 「夜ご飯、幸大の好きなハンバーグにするから、ポップコーン食べ過ぎないでね?」  ハンバーグ、に目をキラキラと輝かせる幸大。  私はホッとし、息子にトイレに行くように言った。  そして、幸大のリュックサックにハンカチ、ティッシュ、ウエットティッシュ、ごみ袋、飴なんかのお出かけに必要なものを詰めていく。  トイレから戻った幸大にパーカーを着せて、リュックに入っているものを説明した。 「おい」  振り返ると、着替えた弘毅が右手を、掌を上にして差し出していた。  私はぎゅっと唇を結んで、幸大の部屋のおもちゃ箱の後ろに置いたバッグから財布を取り出す。  それを持って振り返ると、弘毅さんが立っていた。  思わず足がすくむ。 「ん」  手を差し出され、私は財布から五千円札を取り出し、渡した。 「ポップコーンも食うんだろ」 「え? そう......だけど――」  映画を見るのに、大人二千円、子供千円だ。  ポップコーンに二千円もかからない。  駐車料金だって、三時間は無料。  足りる。  お釣りがでる。
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