1.疑い

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「――過保護すぎるんだよ! 来年は小学生だってのに、食べ残しのポップコーンなんか大事に抱えて漏らすとか、マジ、あり得ねぇだろ! ちゃんと教えとけ!」  幸大が、私のために残しておいたと言った時の、悲しそうな表情を思い出す。  弘毅さんはきっと、おもらししたことに怒って、真っ先にポップコーンを取り上げたのだろう。そして、目の前でゴミ箱に捨てた。  おもらしだけでもショックだったろうに、わざと残しておいたポップコーンを捨てられて、更に悲しかったはず。 「そもそも、あなたは何をしていたの?」 「は?」 「幸大を放って、どこで何をしていたのよ」 「映画だよ! 俺は俺で映画を見てたんだ」 「だとしても、幸大の映画が終わるまでに出てきて待ってるのが普通でしょ!?」 「はぁ!? 折角金払って見てんのに、途中で出てくるとかナイだろ!」  大人向けの映画なら、優に二時間から二時間半はあるだろう。  幸大は、三十分以上も一人でパパを待っていたのか。  そして、出てきたパパは女と手を繋いでいた。  映画を見ながら、ナニをしていたのかしらね――。  幸大が笑ってくれたらいい、と思った。  弘毅さんが息子(幸大)に優しくしてくれたらいい、と願っていた。  その願いは、木っ端微塵に打ち砕かれた。  それが、すべてだ。
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