2.確信

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 手が震える。  今夜、私はコレを夫のスーツか鞄に仕込む。  録音時間は百五十時間のボイスレコーダー。  念のために二本、買った。  映画館の一件から、私はSNSで【サレ妻】を何度検索したかわからない。  そして、とにかく証拠集めが必要だと知った。  ドライブレコーダーやGPS、メッセージアプリの履歴など、プロに頼まなくてもできることがあると知った。  弘毅さんは電車通勤だからドライブレコーダーは使えない。だから、ボイスレコーダーにした。  夫の浮気疑惑は、恐らく黒だろう。  だが、六歳児が見た、手を繋いでいた事実だけでは浮気とは言えない。  だから、確固たる証拠を掴もうと決めた。  私たちの行く末が、離婚なのか再構築なのかは、まだわからない。  考えたくない。  だって、いくら浮気の証拠があっても、離婚となれば私の方が立場が弱い。  ひとりで幸大を育てていく覚悟は、まだできない。  それでも、じっとはしていられないと、目に見えない何かに突き動かされるように、私はボイスレコーダーを買った。  きっと、SNSの同じ境遇の人の多さに、驚きながらも勇気をもらったからだろう。  以前の私なら、絶対にできなかった。  そして、もう一つ。  弘毅さんのスマホのメッセージアプリのデータの入手だ。  これもSNSで得た知識。  弘毅さんのスマホのロックを解除して、浮気相手とのメッセージを私のスマホかPCに転送する。  問題は、ロックの解除。  解除された状態でスマホが放置されていればラッキーだが、まずありえない。となれば、パスコード。  私のパスコードは幸大の生年月日。  弘毅さんはどうだろう。  これは、簡単ではない。  私はため息をつき、ボイスレコーダー(これ)をどこに隠しておこうかと部屋を見回した。
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