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手が震える。
今夜、私はコレを夫のスーツか鞄に仕込む。
録音時間は百五十時間のボイスレコーダー。
念のために二本、買った。
映画館の一件から、私はSNSで【サレ妻】を何度検索したかわからない。
そして、とにかく証拠集めが必要だと知った。
ドライブレコーダーやGPS、メッセージアプリの履歴など、プロに頼まなくてもできることがあると知った。
弘毅さんは電車通勤だからドライブレコーダーは使えない。だから、ボイスレコーダーにした。
夫の浮気疑惑は、恐らく黒だろう。
だが、六歳児が見た、手を繋いでいた事実だけでは浮気とは言えない。
だから、確固たる証拠を掴もうと決めた。
私たちの行く末が、離婚なのか再構築なのかは、まだわからない。
考えたくない。
だって、いくら浮気の証拠があっても、離婚となれば私の方が立場が弱い。
ひとりで幸大を育てていく覚悟は、まだできない。
それでも、じっとはしていられないと、目に見えない何かに突き動かされるように、私はボイスレコーダーを買った。
きっと、SNSの同じ境遇の人の多さに、驚きながらも勇気をもらったからだろう。
以前の私なら、絶対にできなかった。
そして、もう一つ。
弘毅さんのスマホのメッセージアプリのデータの入手だ。
これもSNSで得た知識。
弘毅さんのスマホのロックを解除して、浮気相手とのメッセージを私のスマホかPCに転送する。
問題は、ロックの解除。
解除された状態でスマホが放置されていればラッキーだが、まずありえない。となれば、パスコード。
私のパスコードは幸大の生年月日。
弘毅さんはどうだろう。
これは、簡単ではない。
私はため息をつき、ボイスレコーダーをどこに隠しておこうかと部屋を見回した。
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