2.確信

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 三人で歩いていて、親子に間違われることも多い。  私と違って見た目が華やかでジャ〇ーズにいそうな顔立ちは、同じバス停のママさんたちにも人気だ。  今日もきっと、朝のうちに帰りは弟が迎えに来ると伝えたら、クッキーやチョコレートのプレゼントをもらうだろう。  実際、見送りの際に伝えたら、バスの先生もママさんたちも、「目の保養になるわぁ」とうっとりされた。  大急ぎで掃除と洗濯を済ませ、ダイニングに幸大のおやつを置き、自分の出かける支度をしていたら、インターフォンが鳴った。 「おはよ」  今日も見目麗しい弟が、後頭部に寝癖をつけて現れた。  明るい茶色の、うねりのある長めの髪。  これは、何年も前にホストをしていた時のまま。  いくつもあったピアスの穴は、すっかり塞がった。 「おはよう。ごめんね? 朝から呼び出して」 「いや、いいよ」  玄関ドアが閉まるなり、ぎゅうっと抱きしめられる。  抱きしめると言うとアレだが、ハグだ。  私と弟には昔からごく日常的な、挨拶。生存確認の一種。  私も弟の背中に腕を回した。  昔は私の袖を掴んで後ろからついてきていた、小さくてひょろひょろしていた六歳年下の弟は、今や見上げていると首が痛いくらい長身で、細身なのにこうして触れると意外と筋肉質なのがわかる、健康的で魅力的な男性になった。  姉としては、大変喜ばしい。 「また、いいように使われてんの? 断ったら?」 「断れたら、そうしてるけどね......」  輝は私を放し、ガシガシと頭を掻いた。 「ま、無理か」
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