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三人で歩いていて、親子に間違われることも多い。
私と違って見た目が華やかでジャ〇ーズにいそうな顔立ちは、同じバス停のママさんたちにも人気だ。
今日もきっと、朝のうちに帰りは弟が迎えに来ると伝えたら、クッキーやチョコレートのプレゼントをもらうだろう。
実際、見送りの際に伝えたら、バスの先生もママさんたちも、「目の保養になるわぁ」とうっとりされた。
大急ぎで掃除と洗濯を済ませ、ダイニングに幸大のおやつを置き、自分の出かける支度をしていたら、インターフォンが鳴った。
「おはよ」
今日も見目麗しい弟が、後頭部に寝癖をつけて現れた。
明るい茶色の、うねりのある長めの髪。
これは、何年も前にホストをしていた時のまま。
いくつもあったピアスの穴は、すっかり塞がった。
「おはよう。ごめんね? 朝から呼び出して」
「いや、いいよ」
玄関ドアが閉まるなり、ぎゅうっと抱きしめられる。
抱きしめると言うとアレだが、ハグだ。
私と弟には昔からごく日常的な、挨拶。生存確認の一種。
私も弟の背中に腕を回した。
昔は私の袖を掴んで後ろからついてきていた、小さくてひょろひょろしていた六歳年下の弟は、今や見上げていると首が痛いくらい長身で、細身なのにこうして触れると意外と筋肉質なのがわかる、健康的で魅力的な男性になった。
姉としては、大変喜ばしい。
「また、いいように使われてんの? 断ったら?」
「断れたら、そうしてるけどね......」
輝は私を放し、ガシガシと頭を掻いた。
「ま、無理か」
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