2.確信

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 バッグを置き、布団をめくる。  介護の経験はないが、腕を引いて起こしてはまずいことはわかる。  私はテレビの見よう見真似で、正面からお義母さんの背中に腕を回し、上半身を持ち起こした。 「いたたたたっ!」  耳元で叫ばれ、うるさい。  私の倍近い体重のお義母さんをなんなく抱き起すなんて、素人には無理だ。  幸い、ぎっくり腰にしては軽度らしく、自力で起き上がれないだけで、起き上がってしまえば痛いながらも壁を支えに自力で動けるよう。  七十歳を超えているのだから、素人に介護させて悪化するより、行政から支援を頼めないものか。  夫がそうであるように、義両親もまた見栄っ張りだから、きっと受け入れないだろうが。  義父は義母より三歳年下で、七十歳までの残り一年は働くらしい。  お義母さんがトイレに行っている間に居間を覗くと、テーブルの上に湯呑や広げた新聞が置かれていた。  台所には、洗われていない食器がどっさり。  ゴミ箱にはスーパーのお惣菜のパックが捨てられている。 「朱里さんっ」 「はい!」  出てきた義母を布団に寝かせる。 「掃除機と拭き掃除、トイレ掃除、洗濯、昼ご飯と夜ご飯の準備をしてほしいの。あ、明日の朝の分のご飯も炊いてね」 「......はい」  輝に頼んできて良かった。  どう頑張っても四時間ですべては終わらせられない。  私は洗濯機のスイッチを入れ、掃除機をかけ始めた。  SNSに、義両親に旦那の浮気を暴露することで、旦那を追い詰めたと書き込んでいる人がいた。  だが、私の場合、きっと私の至らなさを責められ、浮気は男の甲斐性だなんて言われるのが目に見えている。  嫁はじっと耐えろ、と。
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