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バッグを置き、布団をめくる。
介護の経験はないが、腕を引いて起こしてはまずいことはわかる。
私はテレビの見よう見真似で、正面からお義母さんの背中に腕を回し、上半身を持ち起こした。
「いたたたたっ!」
耳元で叫ばれ、うるさい。
私の倍近い体重のお義母さんをなんなく抱き起すなんて、素人には無理だ。
幸い、ぎっくり腰にしては軽度らしく、自力で起き上がれないだけで、起き上がってしまえば痛いながらも壁を支えに自力で動けるよう。
七十歳を超えているのだから、素人に介護させて悪化するより、行政から支援を頼めないものか。
夫がそうであるように、義両親もまた見栄っ張りだから、きっと受け入れないだろうが。
義父は義母より三歳年下で、七十歳までの残り一年は働くらしい。
お義母さんがトイレに行っている間に居間を覗くと、テーブルの上に湯呑や広げた新聞が置かれていた。
台所には、洗われていない食器がどっさり。
ゴミ箱にはスーパーのお惣菜のパックが捨てられている。
「朱里さんっ」
「はい!」
出てきた義母を布団に寝かせる。
「掃除機と拭き掃除、トイレ掃除、洗濯、昼ご飯と夜ご飯の準備をしてほしいの。あ、明日の朝の分のご飯も炊いてね」
「......はい」
輝に頼んできて良かった。
どう頑張っても四時間ですべては終わらせられない。
私は洗濯機のスイッチを入れ、掃除機をかけ始めた。
SNSに、義両親に旦那の浮気を暴露することで、旦那を追い詰めたと書き込んでいる人がいた。
だが、私の場合、きっと私の至らなさを責められ、浮気は男の甲斐性だなんて言われるのが目に見えている。
嫁はじっと耐えろ、と。
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