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現に、弘毅さんの金遣いの荒さを叱ってほしくて、お義母さんに相談したことがあった。
幸大が生まれて少ししたくらいの頃。
その時に言われた。
『外で働く男には男の付き合いがあって、それを支えるのも嫁の仕事』『弘毅のお給料に不満なの!?』『あなたが贅沢しているんじゃないの!?』『これだから今時の若い人は! 私が嫁いだころは――』と、散々に言われて、二度と助けは求めないと決めた。
今時珍しいほどひと昔前の考え方をする。
はぁ、とため息をついて掃除機のスイッチを切ると、和室からお義母さんの声が聞こえてきた。誰かと電話しているよう。
「ええ、大丈夫。嫁が来てるから。――そんなことないわ。頼み込んでやっとよ。気が利かないというか、親への労りが感じられないのよね。――本当に」
誰がいつ頼み込み、誰がいつ頼み込まれたのか。
「連絡しなきゃしてこないし。――そう。薄情なものよ。――ねぇ!? まぁ、仕方がないわ」
また、そうやって――。
「親のいない人だから」
義母は、ふた言目にはそう言う。
親がいないから礼儀がなってない。親がいないから常識がない。親がいないから。
死んでしまったものはしょうがないじゃない――!
「帰る場所なんてないんだから、もっと私たちを大事にしてほしいもんだわ」
言われなくたってわかってる。
わかってるから、逃げ出せずにいる。
いや、違う。
生きていたって、帰る場所なんてなかった。
頼れるような関係じゃなかった。
私の家族は、幸大と輝だけよ......。
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