2.確信

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 現に、弘毅さんの金遣いの荒さを叱ってほしくて、お義母さんに相談したことがあった。  幸大が生まれて少ししたくらいの頃。  その時に言われた。 『外で働く男には男の付き合いがあって、それを支えるのも嫁の仕事』『弘毅のお給料に不満なの!?』『あなたが贅沢しているんじゃないの!?』『これだから今時の若い人は! 私が嫁いだころは――』と、散々に言われて、二度と助けは求めないと決めた。  今時珍しいほどひと昔前の考え方をする。  はぁ、とため息をついて掃除機のスイッチを切ると、和室からお義母さんの声が聞こえてきた。誰かと電話しているよう。 「ええ、大丈夫。嫁が来てるから。――そんなことないわ。頼み込んでやっとよ。気が利かないというか、親への労りが感じられないのよね。――本当に」  誰がいつ頼み込み、誰がいつ頼み込まれたのか。 「連絡しなきゃしてこないし。――そう。薄情なものよ。――ねぇ!? まぁ、仕方がないわ」  また、そうやって――。 「親のいない人だから」  義母は、ふた言目にはそう言う。  親がいないから礼儀がなってない。親がいないから常識がない。親がいないから。  死んでしまったものはしょうがないじゃない――! 「帰る場所なんてないんだから、もっと私たちを大事にしてほしいもんだわ」  言われなくたってわかってる。  わかってるから、逃げ出せずにいる。  いや、違う。  生きていたって、帰る場所なんてなかった。  頼れるような関係じゃなかった。  私の家族は、幸大と輝だけよ......。
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