2.確信

11/16

3749人が本棚に入れています
本棚に追加
/166ページ
「あら。そんなにおかずを持って帰るの?」  帰り際に義母に挨拶をしたら、言われた。 「弘毅さんと幸大の夜ご飯を作れていないので」 「明日の私たちの朝ご飯はある?」 「ご飯とお味噌汁は残っています。卵焼きが冷蔵庫にあります」  早く帰りたい。  いつもならとっくに幸大とご飯を食べている。  輝に電話したのが十五分前だから、もたもたしていたら着いてしまう。 「明日はもう少し早く来てちょうだい」 「はい......」  幸大には、挨拶と「ありがとう」「ごめんなさい」をちゃんと言える大人になってほしい。  そう思った。  家を出ると、輝の車が五十メートルくらい先に見えた。  運転席の後ろには、幸大。私は幸大の隣に乗り込んだ。  満面の笑みで迎えられる。 「ママ、おかえり!」 「ただいま。迎えに来てくれてありがとう」 「お疲れ。寄るとこない?」 「うん。大丈夫」  車内には、幸大が好きな戦隊の歌が流れていて、大熱唱していた。輝も。  来るまでに何度も聞いたから、覚えたらしい。  弘毅さんはこんな風に幸大の好きな曲をかけてはくれない。  機嫌のいい時に珍しくかけてくれても、一度だけ。  叔父()の方がよほど父親らしい。 「おばあちゃん、大丈夫だった?」 「うん。でも、心配だから明日も行って来るね」 「うん!」  自分のことばかりで、幸大がどうしてるかを聞いたのは帰り際。  そんな名ばかりの祖母の体調を心配する幸大の優しさに救われる。  このまま、素直に育ってほしいと願うばかりだ。
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3749人が本棚に入れています
本棚に追加