2.確信

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「帰って来たみたい。また、聞かせて?」 『わかった。じゃ』  私が輝とよく連絡を取っていることを、弘毅さんも良く思わない。  だから、彼の前で電話しない。  私はスマホを布団の上に放って、玄関に出た。 「お帰り」 「ただいま! ママ、ピザ買ってきた!」 「そう。ありがとう」  息子の笑顔に、ホッとする。 「ママ、元気になった?」 「うん。もう大丈夫」  幸大の笑顔を見たら、本当にダルさなんて吹っ飛んだ。 「ママ、もう風邪ひかないでね」 「うん?」 「ママ!」  幸大が靴を脱いで、勢いよく足にしがみついてくる。 「どうしたの?」 「幸大。もうすぐ小学生になるのに、いつまでママべったりでいるんだよ」  弘毅さんが幸大の頭をぐりぐりと強めに撫でる。  その時、幸大が弘毅さんを見上げた。  睨んでいる、ように見えたのは気のせいだろうか。 「あ、ありがとう」  幸大の視線に、弘毅さんが不機嫌にならないよう、私は言った。 「ゆっくり休めて、だいぶ楽に――」  ――え......?  言いかけて、急に喉が塞がった。  弘毅さんの首元に、赤い痣を見てしまったから。  キス......マーク?  それに、ジャケットの中のTシャツの襟の折り返しが見える。裏表だ。 「ピザ、食えるか」  弘毅さんが聞く。 「うん......」 「三千円だった」 「あ、うん。あとで――」 「――あー、腹減った」  弘毅さんがピザを持ってリビングに向かう。  私は足にしがみつく幸大と共に、その後姿を見ていた。  朝からTシャツが裏返しだったのだろうか。  私が気づかなかっただけだろうか。  違うと思う。  もしそうなら、気づいた。  いくら熱があって具合が悪くても、気づいたと思う。  そもそも、洗濯物はちゃんと表にして畳んである。それを、どうして裏返しに着るだろうか。  一度......脱いだ......?  まさか。  どこで?  ありえない。
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