3.接触

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  ***** 「よく......こんなことできたな」  ボールペン型のボイスレコーダーを握りしめ、言った。  姉ちゃんは「うん。私もそう思う」と言った。  姉ちゃんを責めたわけじゃない。  姉ちゃんは盗聴(こんなこと)を思いつく人でも、軽々しくやってみようと思う人でもない。  穏やかで争いを好まない姉ちゃんだ。バレたら何を言われるか、されるかと思えば怖かったろう。  それでも、じっとはしていられない、してちゃいけないと思ったのは、幸大のため。  姉ちゃんはいつもそうだ。  自分じゃない誰かのために頑張る。  以前はその対象が俺だったが、今は幸大。 「なんで、すぐに俺に言わないんだよ......」  こんなものを買う前に言ってくれたら、姉ちゃんにここまで辛い現実を突きつけたりしなかった。 「言ったら別れろって言うでしょ?」 「当たり前だろ!」  俺は姉ちゃんを抱きしめた。  姉ちゃんも俺を抱きしめ返す。  昔から、こうしてきた。  どちらかが辛い時、どちらも寂しい時、抱き合って、一人じゃないと確かめた。  初めてそうしてから、ずっと。  俺は、昔姉ちゃんが俺にそうしてくれたように、姉ちゃんの後頭部を撫でた。 「俺が確かな証拠を集めるから、離婚しろよ」 「でも――」 「――慰謝料と養育費をしっかり取って――」 「――そんなお金、ないよ」 「え?」 「慰謝料なんてもらえるだけ、うちにはお金ない」 「だったらなおさら離婚しろ。それとも、まだ好きか?」 「え......?」  こうして抱きしめていなければ聞こえないくらい小さな声。  腕を緩め、姉ちゃんの顔を覗き込む。 「旦那のこと、好きか?」 「そんなこと――っ」
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